クリスマス狂想曲 十二月 そう聞いた世間一般、おそらく殆どの人間が押し迫る一年の終わりよりも、その直前に控えているクリスマスの事を思い浮かべるだろう。 何しろ掻き入れ時だし、カップルや、その手前の人間にとって、それは大事な大事なイベントだ。 そう、この俺、阿部隆也にとっても、今年のクリスマスは、特別な意味を持つ物だった。 今年の誕生日、俺はとても大事な物を手に入れた。 所謂恋人という存在だ。 しかも、俺の好みを鑑みた上で、最高で、でも難攻不落と思われた相手を手に入れたんだ。 12月11日からのこの数日、俺は幸せの絶頂に居たと言っても過言は無い。 難攻不落と俺に思わしめた原因。それは相手が同性、つまり男であり、共に所属する野球部の部内一、意思の疎通に時間と手間のかかる相手で、キョドリのくせに我が強い。そんな相手に惚れた自分がいっそ哀れな程だった。 こいつを落とすまでの俺の我慢を、どこの誰が笑えようか……! (ホントに笑う奴が居るとすれば、直々にシメてやる) この、大手を振っていちゃつく事の出来る理由を、誰もが自由に手に入れられる日を、俺は本当に心待ちにしていた。 な の に だ ……! 「阿部、水谷、花井、しのーか!クリスマスイブの予定空けとけよ?三橋の家で、野球部全員集まって、クリスマスパーティーやるかんな!」 一時間目の授業が終わった後、7組の教室に飛び込んできた小猿が、そう言った瞬間、俺は動物語が理解できずに、「は?」と声を出していた。 「だーかーらぁー、三橋ん家で、イブの夜にみんなで集まってさ、クリスマスパーティーやるの!」 「何だよ田島!俺等の都合は無視か?」 小猿──こと田島の科白に、花井が真っ当な反応を示した。 「えー?花井は駄目なのか?」 親に物を強請る子供のような顔で問いかけた田島の言葉に、真っ当だった花井は脆くも陥落した。 ってか、こいつが田島に強請られて勝てる訳無ぇ。 「いや、別に予定は無ぇけど……」 「じゃあ決まり!水谷は?」 「うん、俺は良いよぉ。どおせ、今年は寂しいクリスマスの予定だったしねぇ……」 暗い表情で視線を逸らすクソレの事も、小猿に背中から抱きつかれ、嫌そうな口ぶりとは裏腹に、顔をニヤつかせた主将も目に入らず、俺は手にしていたシャーペンを握りつぶしそうな勢いで握った。 一体どこの誰だ!三橋の家でパーティーするなんて言い出したのは! そんな俺の心の中の絶叫をひた隠しにしつつ、俺は興味無さそうな顔を取り繕って、田島を振り返った。 「田島。何でいきなりそんな話になったんだよ」 声に怒りが滲まないように、頭の中で必死に「平常心」と唱えながら、俺が尋ねると、田島は花井の坊主頭に頬擦りしながら、「泉がさぁ」と、心底嬉しそうに言った。 「三橋にクリスマスの予定があるかどうか聞いたんだよ。そしたら、毎年家族でケーキ食べるだけだって言うから、そんなら、野球部全員で集まろうぜって話になったんだ。おっと、ヤベ。チャイム鳴り始めた。充電も終わったし、んじゃまたな、花井!しのーかも頼むぜ!」 「訳分かんねぇよ!」 「アッツーイ……」 喜色満面で、7組の教室を後にする田島に向かって、耳を真っ赤にした花井が叫び、水谷が関わりたくないといった暗い声で小さく呟くのを聞きながら、俺は机の上に広げていた一枚のルーズリーフを、手にしていたシャーペンの先で引裂いていた。 昼休み、いつもなら夢の中に入っている時間に、俺は9組の教室を訪ねた。 滅多に来ない教室だが、目当ての人物達が居る場所はすぐに分かる。 ふわふわした髪を揺らしながら、一生懸命両手で持った焼きそばパンを頬張る姿は、いたいけな小動物を思わせて、それだけで俺は和める。 扉を開け放った瞬間まで、俺の中で渦巻いていた怒りが幾分中和されたところで、俺は大事な恋人、三橋に向かって手を上げた。 「三橋」 その瞬間、俺に向かって正面を向いていた三橋は、弾かれたように顔を上げ、その周囲にいたチームメイト二人と、応援団の団長も、夫々何かを口に入れながら顔を上げた。 「あ、阿部、君!」 ああ、三橋。そんなに嬉しそうな顔をしないでくれ。こっちが照れる。 「なんだよ阿部。珍しいな」 口の中の物を飲み込んで口を開いた田島には目もくれず、俺は最後の一人、泉に目を向けた。 「まぁ、ちょっとな」 俺の視線に気付いた泉が、腰掛けた椅子から、一見機嫌良さそうに、笑顔でこっちを見上げて来た。 「何だよ阿部。教科書でも忘れたのか?」 にこにこと笑顔で応対する泉を見るや、俺は一瞬にして閃いたものがあって、すぐ側にいた浜田に目を向けた。 すると、浜田は目が合ったと思った瞬間、思いっきり首を振って俺から視線を逸らし、あさっての方向を見ながら、食事を続けた。 いやに愛想良いのに、背中で妖気を纏っている泉の肩を叩くと、俺は折角の『三橋と二人きりのクリスマス計画』をぶち壊してくれた張本人に、ありったけの怒りと同情を乗せた表情で顔を覗き込み、鼻で笑ってやった。 「ご愁傷様」 「ってめ!ムカツク!表出ろ!」 一瞬にして沸騰した泉に、三橋と田島は何が起こっているのか理解できないといった顔をし、浜田は視線を逸らし続けていた。 「……で?お前が浜田と一緒に居られなくなった腹いせかよ」 「’ありていにいえばそのとおり’とでも言えば満足か?あぁ?」 この時期滅多に人の近寄らない、屋上に続く階段の踊り場に連れ出された俺は、不機嫌極まりない泉を目の前に、盛大な溜息を吐いた。 「お前等の事は別にどうでも良い。だがな、何で俺等まで巻き込むんだよ。暇な連中だけで集まってやれば良いだろうが」 「はっ!分かってないなぁ阿部君」 思いっきり人を馬鹿にした態度で、泉は俺の顔を覗き込んできた。 「阿部ぇ。三橋はさぁ、親とか親戚とかとクリスマスを祝う事はあっても、友達だけでクリスマスなんてやった事無いんだぜ?だったら友人として、チームメイトとして、またクラスメイトとして、ぜひ三橋にその楽しさを分かってもらいたいじゃないか!」 ……こいつ、何か変な薬でもやってんのか? 「それに阿部、一つ良い事を教えてやる」 急に猫の目のように態度を変えた泉の言葉に、俺は怪訝に思いながら泉を見た。 「何だよ」 「当日、三橋の親は、二人とも留守だ」 なにぃっ! 俺が目を瞠った瞬間、泉の顔に黒い笑みが浮かんだのは、決して見間違いでは無いだろう。 「俺等は食い物食い終わったら退散すると思うし。その後は好きにやれよ。じゃあな」 俺を鼓舞するように肩を叩いて、教室の方に向かって歩き出した泉の背中を見送りながら、俺は小さくガッツポーズを決めた。 カミサマありがとう!これは俺に与えられたプレゼントですよね!? かくしてクリスマスイブ当日、俺達野球部員は、全員三橋の家に集まった。 事前に聞いていた通り、三橋のおじさんおばさんは、二人揃って群馬の方に用があって出掛けてしまい、明日まで帰らないらしい。 全員千円以下で、下限は任意というプレゼントを用意させられ、それぞれの家から食い物や飲み物を持ち寄った手作り感たっぷりのパーティーは、誕生日パーティーの時と同じく、三橋の部屋で準備が進められた。 「皆、飲み物いってる?」 「おお!しのーか、早く座れよ、時間なくなっちまう!」 「そう思うなら手伝え田島!」 普段のマネジ振り同様、得手勝手に座っているメンバーに、皿やら何やらが行き渡っているかを確認した篠岡の言葉に田島が応えると、これまた西浦の母と影で呼ばれている花井が、それこそ母親のようにたしなめた。 篠岡以外のメンバーは、テスト勉強の為などで何度もここを訪れている為、持ち寄った食い物の温めなおしや、食器の準備は、三橋の手を借りなくてもスムーズに行った。 「なぁなぁ、しのーかも西広も早く帰んなきゃなんないんだったら、早いとこプレゼント交換しちゃおうぜ!」 「えー?篠岡と西広、帰っちゃうの?」 「うん、私は家が遠いし、西広君は家でサンタさんやるんだって」 誰が用意したのか、ド派手な緑の三角帽子を被った田島は、待ちきれない様子で叫んだが、それを聞きとがめた水谷が不満そうに言うと、篠岡はそう言って笑い、西広も、恥ずかしそうに頭を掻いた。 「今年は家も父親が出張で帰れないもんだから、妹の為にね……ちょっと恥ずかしいけど」 「分かるなぁ。俺も去年、弟の為に、ってやらされてさぁ……付け髭引っ張られてあっという間にばれちゃったけど」 「俺のとこはそういうことないなぁ……ってか、男ばっかの兄弟だから、変にシビアで、俺小学校一年の時には正体知ってたな」 栄口と巣山が加わったにこやかな会話が一段落した所で、準備に一階と二階を行き来していた花井と泉、沖が揃い、やっとパーティーが始まったのは、集まってから三十分も経った頃だった。 「さ!んじゃ始めようぜ!花井、何か言ってよ!」 「っていきなり何だよ!何言やぁ良いの!」 「お前、クリスマスの掛け声は一つだろうが」 俺の冷たい一言に、言葉を詰まらせた花井は、ウーロン茶の入ったグラスを持つと、それを高々と掲げて、緊張しているのか耳を赤くした。 「んじゃぁ、お疲れっした。メリークリスマス!」 「花井忘年会のおっさんかよぉ!メリクリー!」 水谷の突っ込みに、他の全員が笑いながら唱和し、パーティーは至極和やかに始まった。 全員で夫々持ち寄った料理を平らげ(もちろん「うまそう」コールの後だ)ながら、野球談話に花を咲かせたり、王様ゲームをしているうちに、意外と早く時間は過ぎて行って、篠岡と西広を、部員全員で「送り狼に気をつけろ」という声援付きで見送った後、俺達は温かい三橋の部屋に戻り、残っていた食べ物を全て胃袋の中に片付け、最後にやったプレゼント交換で手にしたプレゼントを開ける事になった。 「なんだこれ!白菜って!田島か!?」 花井が当てた、一際でかい黒のビニール袋の中身を確認していた本人が、素頓狂な声を上げた。 「おお!オレオレ!ここ来る前に、爺ちゃんの畑から採ってきた奴だから、すげぇ新鮮だぜ!」 「田島うまい!それならタダだもんな」 「そういう水谷は、何もらったの?」 「それが聞いてよ栄口!誰が入れたのか分かんないけどさ、中学の英語の問題集!こんなの俺要らないよぉ」 「はは、田島に当たれば丁度良かったのにね」 とは栄口。全くもってその通りだ。 「三橋は?」 急な沖の問いかけに、パーティーの間中、俺の隣でずっとニコニコしていた三橋は、いつもの「フヒ」という変な声を上げて、暖房が効きすぎているのか、赤い顔で笑った。 「お、れは、お菓子、の詰め合わせ……」 そう言って手にしていた紙袋をあけて見せた三橋のもらったプレゼントは、チロルや酢昆布といった駄菓子類が、ごちゃごちゃと詰め込まれている。 ま、変なものじゃなくて良かった。三橋には、ちゃんと別にプレゼントを用意しているから、何が当たっても構わない。 「阿部は何?どんな物が当たった?」 巣山の言葉に、三橋も知りたそうな顔でこっちを見たから、俺はその辺の薬局の紙袋に適当に放り込まれたとしか思えない、一度開けた跡のある封を開けた。 「……何だこれ?」 一緒に手元を覗いていた巣山が、小さく呟いた。 「ハンドクリーム?」 俺も、出てきた物に訝しげな声を上げた。 「こりゃあ、篠岡に当たるべき物だね」 「そうか?俺は指のささくれとか気になるから、結構使うぞ?」 「ああ、そうそう!俺もリップ使わないと、すぐに唇割れてさぁ、醤油とかがそこに着いちゃうと滲みるんだぁ」 丸い缶の、結構大きなそれを見て、栄口、花井、水谷が、沖と巣山を巻き込んで、冬場の乾燥について語り始めた中、泉が音も無く俺の背後から三橋の反対側に擦り寄り、俺の耳元に顔を寄せた。 「阿部」 不意に潜められた声で呼び掛けられて、俺もつい小さな声で答えた。 「何だよ泉」 「良い物手に入れたじゃん。早速使えば?」 「はぁ?」 泉が何を言いたいのか分からなかった俺は、思い切り顔をしかめた。 その態度に、思いっきり気分を悪くした、という感じで、泉は呆れた顔で俺を見下ろした。 「ふぅん……やっぱり阿部はチキンか。そうかそうか。気の長い野郎だ。精々一人でかいてろ」 「!!!」 最後の捨て台詞を残して、寝転がっていた田島の所に行った泉の背中を見送りながら、俺は心臓が爆発するかと思った。 「な、何、阿部君」 俺が体を固くしたのを感じたのか、いつの間にか俺の肩に寄り添っていた三橋が、驚いた様子で俺を見上げて来た。 泉の野郎〜〜〜〜! このクリスマスイブのパーティーの話が降ってきた時、俺が机の上で引き裂いたルーズリーフには、たった今、泉が俺にけしかけてきた「こと」に及ぶためのシナリオが、幾パターンも考えられていた。 何とでも言え。俺だって、同性に惚れた以外は、いたって健康な男子高校生だ! だが、色々と調べたり準備を整えようとしているうちに今日になってしまい、三橋に、今日泊まる約束を取り付けるのが精一杯だった。 俺だって、三橋といろいろやりたい。だが、それが負担になるのは絶対に避けなければならない。 明日だって、冬休みだが練習はばっちりあるし、天気が悪くても、屋内練習メニューが準備されている。それが分かっていて暴走はできねぇ。 その必死の我慢を突き崩すような事を言いやがって! 「さぁ、そろそろ片付けようか。もう九時だぜ」 花井の号令に、だらだらと居残っていた連中が動き始め、俺と三橋もそれに参加した。 「じゃ、今日は世話になったな、三橋。また明日」 「う、うん。また、明日」 「じゃーなー三橋!」 「うん。田島君」 玄関で俺以外の連中を見送った俺等は、部屋に戻ると、すっかり片付いたそこでどっかりと腰を下ろし、顔を見合わせて笑った。 「楽しかったか、三橋」 「うん!すっごい楽しかった!俺、今日は嬉し、かったんだ。泉君が、クリスマスパーティーやろうって言ってくれて、皆も来てくれて……阿部君が、泊まって、くれて、ホントにうれ、しい」 ああっ!顔を赤らめて、伏目がちにそんな事を言われたら、理性の糸が吹っ飛ぶだろ! 「三橋」 俺は呼び掛けて顔を上げさせると、いつも練習の前後や、帰り道の途中で堪能している三橋の唇に自分の唇をあてがった。 最初は触れるだけで、何度か啄ばむようなキスを繰り返した後、柔らかい頬に手を添えて、容赦なく口内を侵略した。 「ふぁ、あ、……あ、べ、くん……」 三橋の鼻にかかった声に、俺の興奮は増して行き、普段よりも粗暴な行為に、三橋が徐々に体を強張らせ始めていることにも気付かず、ラグの敷かれた床に、三橋の細い体をゆっくりと押し倒して行った。 「三橋……好きだ……」 少しの間だけ唇を離し、多分熱を帯びているだろう目で、俺の顔が一杯に映りこんだ三橋の涙目を見ながらそう告げると、俺は答えを待たずに、再び三橋の唇を貪った。 そして、少しずつ場所を移動させ、頬や瞼、耳たぶや首筋に唇を這わせ、三橋が我慢できずにこぼす声や吐息に後押しされるように、空いた手を、三橋の服の下に滑り込ませた。 途端、三橋は子犬のような声を上げて反応し、潤んだ目で俺を見上げた。 「阿部、君……?」 ゴメン、三橋。俺全然余裕無ぇ。我慢はもう限界です! 俺は腰から差し入れたその手を、ゆっくりと割れた腹筋へ、そしてまだまだ薄い胸元へと移動させ、小さな尖りに触れた。 「あべ、く、ん……!」 涙を零し始めた三橋の、どくどくと早い鼓動を刻む心臓が、体中に血液を巡らせて、首筋を染め上げ、俺は襟元から覗く鎖骨に唇を這わせると、甘いと感じる三橋の匂いに酔いしれながら、手を徐々に下へと降ろして行った。 三橋は小さな声を上げながら体を引き離そうと、俺の両肩に腕を突っ張ったが、俺はさっさとその手を掴んでひとまとめにすると、三橋の頭の上で縫い付けるように押し付けた。 「阿部、君!」 三橋の必死な声に「可愛いなぁ」としか考えられなかった俺は、泉の言葉を思い出し、ズボンのポケットに仕舞い込んだハンドクリームを取り出そうと、三橋の服の下に忍び込ませていた手を、ポケットに移動させた。 何に使うのか? 野暮な事聞くんじゃねぇよ。 だが、俺がハンドクリームの缶を取り出し、片手で蓋を開けようとした時、その丸い形状が災いして、手から零れ落ちた缶は、ころころとラグと床の上を転がっていった。 「あ、くそ!」 悪態を吐いて、転がっていった物を取り戻そうと、部屋の扉に向かって行ったそれを視線で追った俺は、そこに──鬼を見た。 「阿部?三橋に何をしてんの?」 静かな仏の表情で佇みながら、背後に夜叉を背負った栄口が、怒った俺を目にした時以上に怯えた水谷を伴って、俺達、否、俺を見下ろしていた。 「さ、栄口……」 三橋がさっきから俺を呼んでいたのは、もしかしてこれ? 「俺達が帰った途端に何?田島と花井でも、もう少し自重すると思うんだけど?」 あの二人と比べんな、と応えようとした途端、口答えなど許さないという気迫が、栄口から放出されて、俺は口篭った。 「阿部……俺達は甲子園目指してるんだよね?だったら、明日も練習があって、大変だって言う事も分かるよね?」 「……分かった、栄口……うん、良く分かった……今日はやめとく。だからお前等は帰れば?俺は今日三橋ん家に泊まらせてもら──」 「三橋、俺等も泊まって良い?阿部だけじゃ寂しいだろ?俺と水谷も一緒に泊まってあげるよ」 「うえっ!ほ、ホントに!」 三橋!俺に組み敷かれたままそんなに嬉しがんな! だけど、部内で一番信頼の厚い西浦のもう一人の母の言葉に、三橋の顔は本当に嬉しそうにきらきらと輝いていた。 ああぁ……俺のきらきらとした夢と希望は、どこかに蹴り飛ばされちまった…… 俺は、栄口がいつの間にか足蹴にしていたハンドクリームの缶が、段々ひしゃげて行くのを見ながら、ラグの上に倒れ伏した。 結局、三橋の家に栄口、水谷も共に泊まり、夜中に何も起きないようにするために、と、栄口が三橋のベッドで一緒に眠る事になった。 俺は客用布団で、水谷と並んで寝る羽目になりながら、一晩中、眠りの世界に落ちる事は出来なかった。 俺ぁもう、絶対神様なんか信じ無ぇ!! 頑張って書き上げたのに! 何とかクリスマスに!と思って頑張った私をあざ笑うかのように、さぁ、上げるぞと思った瞬間、ネットに繋がらないという状態に…… 阿部をいじめ過ぎたかな?(笑)とにかく、メリークリスマス! |